大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和42(あ)2091 判決

主 文

本件各上告を棄却する。

理 由

弁護人倉田哲治ほか六名の上告趣意第一点について。

所論は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三五

年六月二三日条約第六号、以下新安保条約という。)が、一見明白に憲法九条、前

文に違反するのに、原判決が、これに対する司法審査をしなかつたのは、憲法七六

条三項、八一条に違反する旨主張する。

しかし、新安保条約が、憲法九条および前文の趣旨に反して違憲であることが明

白であると認められないことは、当裁判所昭和四四年四月二日大法廷判決(刑集二

三巻五号六八五頁)の明らかにするところであり、同条約のごとき、主権国として

のわが国の存立の基礎に重大な関係をもつ高度の政治性を有するものが違憲である

か否かの法的判断をするについては、司法裁判所は慎重であることを要し、それが

憲法の規定に違反することが明らかであると認められないかぎりは、みだりにこれ

を違憲無効のものと断定すべきでないことも右大法廷判決の判示するところである

から、これと同趣旨に出た原判断は正当であつて、所論はすべて理由がない。

同第二点について。

所論は、原判決が、衆議院における昭和三五年五月一九日の新安保条約の承認決

議等について裁判所の法令審査権が及ばないとしたのは、憲法七六条三項、八一条

に違反する旨主張するが、当裁判所昭和三七年三月七日大法廷判決(民集一六巻三

号四四五頁)の趣旨によれば、所論の理由のないことは明らかである。

同第三点について。

所論は、検察官の本件公訴提起が、社会正義と公正に反するものであるから公訴

棄却すべきであるのに、原判決が、これを適法であるとしたのは、憲法三一条に違

- 1 -

反する旨主張するが、記録を調べても、本件公訴提起が社会正義と公正に反するも

のと認めるに足りる資料は存しないから、所論は、その前提を欠き適法な上告理由

にあたらない。

また、記録を調べても、刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて、同法四〇八条により、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。検

察官川口光太郎 公判出席

昭和四四年一二月九日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 松 本 正 雄

裁判官 田 中 二 郎

裁判官 下 村 三 郎

裁判官 飯 村 義 美

裁判官 関 根 小 郷

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!